絵本『ごきげん春夏秋冬』ができるまで② −ラフの線から、動物たちが動き出すまで

前回は、この絵本が生まれたきっかけについて書きました。今回は、実際に絵を形にしていく過程、ラフの話です。

完成した絵だけを見ると、動物たちが自然にそこにいるように見えるかもしれません。でも、その形になるまでには、何度もラフを描き直しました。

動物たち、季節、食べもの。

そのバランスやメリハリを探りながら、少しずつ完成形に近づいていきました。

8月のラフ。動物たちの位置や、場面全体の流れを探していた段階。

8月の場面には、お盆や夏祭りの気配があります。どんな場面が夏らしく、日本的なのか。食べている様子?それとも、用意している場面?そして、家族を描くのか、もっと絞るのか。

ひとつの場面には、主役になる動物だけでなく、その周りにいる子たち、食べもの、季節の小物、余白があります。どれをどのくらい描くかで、絵の空気は大きく変わります。

描きすぎると説明的になる。少なすぎると、季節の空気が薄れる。その間を探しながら、動物たちの位置や奥行き、視線の流れを何度も調整していきました。

6月のラフ。季節の食べものと、動物たちのしぐさのバランスを探っていた段階。

6月は梅やらっきょうなど、季節の手仕事が並ぶ時期です。

食べものは、この絵本の中でとても大事な存在です。でも、食べものだけが目立ちすぎても、動物たちだけが目立ちすぎても、場面としては少し弱くなります。

カワウソとカエルが、どんなふうに描かれるのがいいのか。

手仕事の気配と、そばにいる相手とのやりとり。考えているような顔、手に取るしぐさ、隣にいる距離。そうしたものが伝わるような構図を探していきました。

誰が何を見ているのか。何を手にしているのか。そのひとつひとつが、場面の温度を作っていきます。どちらかといえば、私の場合は、理論よりも感覚を大事にしながら描き進めます。

1月のラフ。顔の向きや目線、体の向け方で、それぞれの動物らしさを探していた段階。

1月は、動物たちが集まる場面です。着物姿のキジトラと黒白の猫、手前にトイプードルと黒柴。それぞれがこたつを囲んでいます。

みんなが同じ方向を向くと、単調になります。かといってばらばらにしすぎると、散らかった印象になります。

顔の向き、目線、座り方。そのひとつひとつに、その子らしさが出てきます。

動物たちの表情は、わかりやすく描きすぎないようにしています。はっきり笑っている、怒っている、と決めすぎるよりも、少し想像の余地がある方が、その子らしく見えることがあります。

そういうバランスを、線の段階から探しています。

最終的には、登場する動物の数も見直しました。多すぎると、それぞれの存在感が薄れてしまうからです。

誰をこの場面の中心に置くか。そこも、ラフを重ねながら決めていきました。

ラフは、まだ完成した絵ではありません。でも、ここで絵の骨組みが決まります。

制作の中で、編集の今屋さんと話していたことのひとつに、「物語の一場面を少しのぞき見るような絵にしたい」ということがありました。

画面のすべてを説明するのではなく、目一杯描き込むところと、読む人が想像できる余白を残すところ。そのバランスを、ラフの段階から探していきました。

どこに余白を残すか。
どこに視線を流すか。
どの動物を大きく見せ、どの動物を控えめに置くか。

構図のアプローチも、場面によって変えていきました。

遠目に全体を見せる場面。動物の顔や手元に目がいくような場面。
そのメリハリが、絵本全体のリズムになります。

また、背景をしっかり描き込む場面と、着ているものや食べもの、動物同士のやりとりだけで季節感を出す場面とを使い分けることで、それぞれの場面に違う空気が生まれていきました。

動物たちの居場所、食べものとの距離、季節の気配。そうしたものを線の段階で探してから、色や細部を加えていきました。

線だけだった動物たちに色が入ると、今度は季節の気配が近づいてきます。

次回は、色を入れていく過程や、絵本の中の春夏秋冬の色について書いてみたいと思います。

絵本『ごきげん春夏秋冬』は、2026年6月28日(日)に鎌倉で出版記念イベントを行います。

絵本の販売、ご予約分のお渡し、原画の展示などを予定しています。

▶ 6/28出版記念イベントのお知らせ

はまぐり涼子

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