2023年4月『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』映画感想イラスト

エブエブ!

タイトルが長い!だからエブエブ。
必ずと言っていいほど省略されたニューワードが生み出される日本語。
とはいえあまりの省略っぷりに最初口に出すの、やや戸惑いました。
すごいですよね。誰がこういうの生み出すんでしょうか。

さて、こちらの映画、日本ではほぼキー・ホイ・クァンのアカデミー賞助演男優賞受賞で話題になった記憶がありますが、巨額投資映画でない限り日本公開はどうしても時差が生じてしまうのが残念。主要部門6つも獲ってるのもすごいと思うのですが。

正直観終わった直後は、訳わからなさが先行して思わずよくアカデミー賞取ったなぁと思いました。乱暴な言い方ですが、アカデミー賞で受賞する作品ってわかりやすい映画、テーマというイメージがあるので、こんなにてんこ盛りでハチャメチャでしかもアジア系移民が主人公。

中年臭い言い回しですが時代が変わってきた感じでしょうか。

ここ最近中華系米国移民による映画は勢いを増しておりますが、過去ノミネートされたfawarellも受賞まで至らかったり多くて非白人への配慮ってまだまだアジア系には浸透してないのかななんて思っておりました。(受賞すりゃいいってものでもないですけど)

ミッシェル・ヨーとキー・ホイ・クァン

80年代から女性アクションの先駆けであり、これまでと違うボンドガールの存在感も示してきたミッシェル・ヨーがこれまで自分が演じてきたキャラクターを総ざらいするような映画へのオマージュもたっぷりに飛び回るだけでなく、頼りない夫と口うるさい舅、同性の恋人と付き合う娘に囲まれ国税局に通う中年女性という生活感みちみちの主人公も存分に演じ切っていました。

グーニーズとインディ・ジョーンズで利発でコミカルで可愛い少年だったキー・ホイ・クァンは、うだつの上がらない夫とマルチバースを行き来する男を小気味よく切り替えて演じているのもなんだか楽しくてうれしい気持ちになりました。アジア系俳優へのニーズの低さに苦しんできたという背景も知ると、これからも頑張ってほしいなぁと思ってしまう単純なわたくしです。

キッチュな要素が集まった笑えてぐっとくる不思議な映画

SF、アクション、家族ドラマに、社会ネタとしてLGBTQやら移民事情なども盛り込まれたこの映画のテンポはめちゃくちゃ速く、これも現代的なものだなぁと感じます。そこかしこに仕込まれた要素を拾う暇がない。笑 でもなんだか観てしまう不思議とカオスなのにまとまるすごさがありました。
1999年のマトリックスも訳が分かんなかったけれど、あの完全なる非日常感があの時代は心地よかった気がします。2020年代の新しいマトリックスは、日常の中で非日常的な要素をぶっ放して私たちの脳を翻弄してくれました。ダニエルズ、すごい二人組だなと思ったらあの『スイス・アーミー・マン』の監督だったのですね。ものすごくシュールな設定と展開、その中にほろりとさせることも忘れないあの匙加減、ここで更に発揮された感じです。

自己満足のオマージュ@ミニオンズ・フィーバー

話は変わりまして、皆さん観たことあるでしょうか、黄色い生き物たちミニオンズの映画。

アニメ興味ない方は知らないかもしれないのですが、このミニオンズシリーズの新作がエブエブが公開された2022年、3か月後の7月に公開されたのですが、エブエブへのオマージュ?!と思う要素が盛り込まれています。気づいた時の自己満足な喜びたるや。

まず、ペットロック。そしてサンフランシスコのチャイナタウンにいるカンフーの達人。
その声優!まだあるかもしれないけど、ミニオンズ2023年に入って初めてちゃんと観て今更大ブームな私にとってはうれしい小ネタでした。それにしてもほぼ同時期に公開された映画に、どういう経緯でエブエブオマージュを盛り込めんたのでしょうか。そこら辺の業界だけの情報やりとりがあったのでしょうかね。

人生は訳の分からないことや不条理で満ちているけれども、それを吹き飛ばすような空想世界が現実を乗り越えるきっかけになるのかもしれません。想像力って大事よね。